記事タイトルの主は、聖ゲオルギオス。
美大入試でお馴染み、石膏像のジョルジョのことです。
ゲオルギオスは古代ギリシア語、ジョルジョはイタリア語、英語になると一般的によく聞く名前になってジョージ。
そんなジョージ君…ジョルジョのお話。
聖ジョルジョは、古代ローマの支配下にあったパレスチナで3世紀後半にキリスト教徒の家庭に生まれました。
当時のローマはキリスト教が異端の時代だったためキリスト教を崇拝し布教した罪から処刑されて殉教者となりましたが、時代経過と共にさまざまな伝説が付け加えられていったその一つに龍退治があります。
『 カッパドキア(現在のトルコ)に悪い龍が出没して困り果てていた人々のところへ通りかかったジョルジョ。「キリスト教徒になるのであれば龍を退治してあげましょう。」と問いかけると、人々はキリスト教を受け入れて龍は退治されました。 』 めでたしめでたし、 というもの。
日本では縁起の良いものとされる龍も、西洋では邪悪なものとされており、しかも古い物語に出てくる多くの龍は異教徒を示しているとも言われています。
なんだかね…
さて、この古代ローマのお話がなぜ現在のイングランド国旗になっているのか???
実際には聖ジョルジョがイギリスと関係を持っていたり訪れたりした記録は無いようですが、キリスト教徒の英雄が邪悪な龍を退治したという「セント・ジョージ」伝説は、ヨーロッパの広い範囲で昔から童話や絵本などの題材として多く存在し、その話を好んでいたエドワード3世が1348年ごろイングランドの守護聖人として定めて、14世紀以降イングランド国旗になったのだそうです。
当時はイギリスとフランスの100年戦争の最中だったことからも、鎧をまとったセント・ジョージ(ジョルジョ)は兵士の士気を高めるのに良い対象だったのでしょう。
因みにセント・ジョージ・クロスと呼ばれるイングランド国旗の、白地は白馬や甲冑を意味し、赤の十字は聖ジョージ(ジョルジョ)の血を意味しているとされています。
そして本題、彫刻のジョルジョ。
制作されたのは1416年頃。
イタリア フィレンツェのオルサンミケーレ教会の外壁龕のために制作された2体の聖人像のうちの一つ。
ジョルジョ像は、武具甲冑組合からの発注によるものだったため、武装した姿で作られています。元々は右手に本物の武器(剣または槍)を握り、頭には冑も被っていたそう。
想像するだけでカッコ良過ぎますね☆
この彫刻は、中世以来続いてきた“教会壁面や柱と一体化した彫刻”から、約1000年の間失われてきた“丸彫り彫刻(人物彫刻自体が独立して存在している)”の形態を復活させた重要な作品で、しかも彫刻の台座に彫られたレリーフ(王女を救うために龍を倒すジョルジョ)では、初期ルネッサンスとして画期的だった遠近法を使っています。
こんな革新的でカッコイイ作品の作者はドナテッロ。
驚きなのは世紀の天才彫刻家ミケランジェロが生まれる約100年前の人!
ドナテッロが飛びぬけた才能の持ち主だったことがわかりますね。
◎一般教室のセットモチーフの部屋には、このジョルジョ像が11月、12月の期間でセットされており、他には石膏大顔面と楽器のある静物、リンゴのある静物、サッカーボールのある静物の4セットです。
楽しんで年末を過ごしてください!