第二次ベビーブーム世代が受験生だった時代、藝大デザイン科の受験生は2000人を超えており、石膏デッサンの一次試験は受験番号の奇数と偶数の2組に分けられ2日間に渡って行われていました。
当時美術予備校に通い始めた私は、1年目にもかかわらず運良く一次試験を合格して気分よく浪人した翌年の藝大一次試験。
石膏像はパジャント。
前列見上げで左斜め45度のベストポジション!
描き出しから調子よく進んでいく中、「これくらい描ければ去年合格したんだから一次は受かるだろう。」と…、こともあろうに制作途中に思ってしまったのです。
邪念が湧いたデッサンの結果は、当然一次落ち。
力が無いのに中途半端な結果を出すと、ろくなことになりません。
(自分の性格の問題ですが…)
絵を、藝大を、入試を舐めていたことを猛烈に反省することとなり、翌年、私立美大に通いながらストイックに制作へ打ち込んで、やっと藝大合格。
あれから30年以上経った今でもパジャントを見ると、苦い記憶が蘇ります…
前置きが長くなりましたが、そんな因縁の石膏像を紹介↓
制作年代 頭部:2世紀頃/胸部:1600年頃に彫刻家によって補足
収蔵美術館 パリ・ルーブル美術館
原形はルーブル美術館に収蔵されている「ベレニケ(Berenice)」という彫像。
1999年以前はこの彫像を「バシャント(Bacchante)」や「イシス(Isis)」と呼んでおり、現在は「イシスの姿をしたベレニケ像」と解釈され、日本国内での名称「パジャント」は、以前の名称「バシャント」が変化したもののようです。
因みに「ベレニケ」とは、古代エジプト・プトレマイオス朝の女王・王妃を指すとされています。
マケドニア朝ギリシャの貴族であったベレニケ1世は、古代エジプトのファラオだったプトレマイオス1世と結婚し、後に女王となった人物で、古代エジプトの王妃、またはイシスの姿をした王妃の肖像彫刻であるとされ、左右対称で正面を見据える表情の理想化された形態の彫刻は、エジプト文明や古代ギリシャ文明やローマ帝国全域で崇拝されて多く製作されたそうです。
※一般教室のパジャント像は12月30日までセットされています。